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みえ木造塾   第1回 講義記録
日時  H16年5月15日(土) 午後1時30分〜午後4時30分
場所  松坂地区木材協同組合 木の情報館
講師  丹呉明恭氏、山辺豊彦氏
テーマ 構造システムとして捉える木造住宅

 塾長挨拶に続き、丹呉氏、山辺氏と共に来られた「住宅建築」編集長より挨拶をいただく。 今回と次回は当初、丹呉、山辺の各氏に1回ずつの講義をお願いする予定だったが、お二人で組んで仕事をされることが多いため、二人一組として2回の講義をしていただけることとなった。それぞれの立場での発言が掛け合いのように軽妙で、大変興味深く、また、特に木構造をきちんと理論的に説明していく姿勢には感銘深いものがあった。
講義概略
<丹呉明恭氏>
 木造住宅を設計していて、理にかなったきちんとした図面を描きたいというのが、そもそも山辺氏と勉強会を始めたり、大工塾を始めたりするきっかけだった。 渡りあご工法については、それ以前から手がけてはいたが、構造的に強いという根拠を明解に説明することができなかった。98年から「住宅建築」に連載した標準仕様作りを通して構造システムを構築してきた。大工塾での実験の積み重ねの自信が大きい。 渡りあご工法の詳細な説明。 通し柱を採用せず、横架材はあごを出して落とし込む。柱頭、柱脚、仕口、継ぎ手は全て込栓にて固定、という方法をとって、木造住宅を建ててきており、この工法がベストだと信じている。
<山辺豊彦氏>
 構造家として木造を考えて、丹呉氏初め色々な設計者と組んでいる。 木構造の考え方には、大きく分けて通し柱を採用するか否かの二通りがあり、丹呉氏は後者だが、それぞれの利点があると考える。 地震国の木造としては中小の地震には無傷で大地震には倒壊しない強さが望ましく、これを考えると基準法の層間変形角1/120以下というのは不合理ではないか。木造の場合、ねばりが強く構造的に柔床に近いと考えられるので、壁倍率の低い壁を分散配置し、床剛性も低目に設定して設計すると合理的だろう。そのためにどのような耐力壁、どのような接合部を選択すればよいかの検討が必要となる。N値法等で詳細に検討すれば金物を使用せずに込栓使用も可能である。 丹呉氏らと共に主催している大工塾では数多くの実験を繰り返しており、構造家の立場で木造を考えるための貴重なデータとなっている。













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みえ木造塾   第2回 講義記録
日時  H16年6月12日(土) 午後1時30分〜午後4時30分
場所  松坂地区木材協同組合 木の情報館
講師  丹呉明恭氏、山辺豊彦氏
テーマ 構造システムとして捉える木造住宅2

 塾長挨拶に続き、丹呉氏、山辺氏より第1回講義に引き続き、構造システムについて講義をしていただきました。 前回の講義では、大工塾を始めた経緯、木構造に関する基本的な考えでしたが、今回の講義ではさらに詳しく説明していただきました。
講義概略
<丹呉明恭氏>
 大工塾での耐力壁実験について、試験体の詳細・実験方法・試験結果のデータを基に講義していただきました。 高さ2,750の耐力壁で、60×120の貫を6段入れた時 壁倍率は2.2位。落し込み板壁は壁倍率0.8、すべりが生じるので耐力壁には不向き。 構造用合板では壁倍率2.8でるが、四周の留め方が悪いと0.8まで低下するとの説明がありました。 今後も実験を続けていき、在来木軸組の壁倍率のデータを確立したいという事でした。
<山辺豊彦氏>
 前回に引き続き、土壁は耐力が低く、粘りが強い。梁通しの架構の特徴についてなど、復習も兼ねて説明していただきました。 次に、丹呉氏の説明をはさんで、基礎について講義していただきました。 布基礎の立ち上がり部分を地中梁と考え、一区画を20u以内でとじた配置をする。 地盤の悪い場所においては、べた基礎のように波打ちする事が生じにくく有効である。 コンクリートの調合方法によって、中性化のスピードも遅くすることもできるとの内容でした。 木構造については、構造的データが少なく、大工塾での実験などを基に、安全性を確立していきたいとの事でした。











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みえ木造塾   第3回 テーブルトーク記録
日時  H16年7月3日(土) 午後1時30分〜午後4時30分
場所  宮川村林業総合センター  研修室
テーマ 「実践!木のネットワークをつくる」宮川流域で始まる木の家づくり

テーブルトークメンバー
宮川村林業振興協議会会長   山本岩生   Shu建築設計事務所   中西修一
宮川村森林組合参事       鳥山昌章   宮崎建築          宮崎重則
宮川村森林組合製材工場主任 尾上 聡   大森建築設計室      大森尚子
藤原林業社長           藤原康孝   なかむら建築(株)     中村貴司
藤原林業社員           坂本 浩    宮川村水質チェックファシリテーター
宮川村役場 産業課主幹    谷 昌樹                    森下隆生 
三重木造塾生他宮川村林業関係者、役場職員など約○○人参加

 塾長挨拶の後、自己紹介とそれぞれの立場で現在考えていることなどが簡単に話されたあと、テーブルトークが始まった。以下その中で出された意見
<林業関係者側の意見>
・設計・施工者側の要望に応えられるのか?応えられるようにしなければなら
 ない。
・間伐材の利用方法→伐採されたものがそのままになっている状態に葛藤し
 ている。
・設計・施工の要望に応えられるものが現状ではない。
・60〜80年ものの木材を使って建てた建物は、最低60〜80年もたさなければ
 サイクルが成り立たない。コストは高くなるが、60〜80年もてば結果的には
 お得になるのでは・・・。
・木の朝市のようなもの
     
・ハウスメーカーの要望に応えるためには県産材だけでは無理
・納期があるため機械に頼った乾燥になってしまう
・虫食い材料は跳ねられる()
・設計者・施工者はもっと山側の(林業のこと)を知るべきである

<設計・施工者側の意見>
・こだわりある木造住宅づくりを行なっていきたい
・流通の段階で希望の木材が使えないことがある。
 (コスト、施工会社の取引の関係など)
・木造の構造、安全性の確保をどうするか
・地場産を使いたいが施主に安心して使える材料であると説明できない?
・競争力が必要(海外のものに対して)
・桧づくりというと施主に受けがいい
・ハウスメーカーなどが不必要な性能を求めているため、それに応えるように
 するためコストが上がるのではないか
・自然乾燥の木材をできるだけ使いたい
・宮川村の木が松阪に出てそこからMSPに戻ってきて加工している。
 おかしな流れではないか?

<その他意見>
・海外の木材を輸入する際に税金をとる→その税金を日本の林業のために
 使ったらいいのではないか?
・良い製品(木材)とは、施工者、設計者、林業関係者、施主 それぞれの
 立場で考えるものがイコールではないのではないか。

 以上のような意見が出たあと、今後とも宮川村との交流を持っていく為に
ネットワークを考える会のようなものを設立するということで皆さんから同意をもらった。











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みえ木造塾   第4回 講義記録
日時  H16年9月4日(土) 午後1時30分〜午後4時30分
場所  松阪地区木材共同組合  木の情報館
講師  今井 信博氏 テーマ 地域のネットワークと木の家づくり〜広島・木の香る住宅工房の取組

 開始の塾長挨拶のなかで、「宮川杉の会」についての説明が行なわれ、その中で宮川森林組合の広報誌に、みえ木造塾が掲載されたとの事である。これからの林業振興協議会との連携が楽しみであると創造し、期待感がみなぎった所で、今回の講義の幕開けとなった。 今井講師より、褐サ代計画研究所・広島事務所所長での活動を行なうまでのあらすじを簡略に述べられる。この講師を引き受けた経緯等を、偶然の出会いの連続であると、気さくに語られ、氏の魅力的な人柄を写し出すとともに、聴衆を一気に惹き寄せて行った。
講義概略
 前半は、広島の風土、産業や山の状態を詳しくデータを用いられ解説されました。 意外にも、暑い気候と、寒い気候が入り混じった地域で、輸入木材も多く、赤松の産地としては、有数である。更に、工業地帯で、山に手が入らない地域でもあるとの事。 木の香る家づくり事業への取り組みは、最初の3年間は、試行錯誤の繰り返しであったとの事。「地域の中で、木の家づくりが、どういう体制で出来るのかを調査し、小さな所と小さな所を結びつけ、個別を集約する小川の流れのような、小規模の住宅のネットワークを複数創れば競争も出来る。」と語られた、確かな信念に満ちた表情は、真剣に楽しんで取り組まれているなと感じられました。大竹の診療所では、医師との打合せの中から、地域で医療を行い、その報酬で建てるので、地域の物を使いたい。土に帰る建物にして欲しい。病気の方は、落ち込んで来るので、木造が良い。等の話が、とても興味深く、改めて、木の成分が、医療福祉の分野でも非常に肯定的に受け止められていることを学びました。 木の香る住宅工房の実践活動は、住まいのセミナー、山のセミナーを中心に毎年見直しを行いながら、6年間続けてこられ、その成果は、ユーザーと山側(消費者と生産者)の意識改革へと繋がっている。また、氏の持ち前の絶妙のバランス感覚で、生協とJAを結びつつ、ネットワーク化するというところまで発展し続けている。 実践の中から、葉枯らし材で、近山の木を使うにあたって、どうやって満足感を与えられるか?価格や、工期が長くなる事や、含水率が下がらない為、新しい乾燥方法を模索したとの事。その結果、葉枯らし材+プレドライヤーを活用した、低温乾燥材の安定供給を目的とした、シルヴァンネットワークの誕生にこぎつけられた。この乾燥方法は、おもに、家具の乾燥方法で行われてきたとの事。また、ヤング係数については、さまざまな試験を行い、見た目と強度は関係ないとの結果、グレーディングマシンを導入されたとの事。 これらの活動は、決して、大々的に行なわれてきたのでは無く、コツコツと継続してやり続けてきたとの事。そして、その中から出てくる発想や考えは、偏らないバランスがとても重要なのだそうです。地域の産業が、疲弊しつつある中での、新しい技術の導入は、思い切った選択であったと思われますが、結果として活性化し、成功しつつあるとの事です。 家を「買う」から「つくる」へとプロセスを楽しむという、地域ネットワークを実践し続ける広島の取組は、今後のみえ木造塾の進むべき方向の、モデルケースのひとつであると確信したのである。











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みえ木造塾   第6回 講義記録
日時  H16年11月20日(土) 午後1時30分~午後4時30分
場所  松坂地区木材協同組合 木の情報館
講師  三澤 文子 氏
テーマ:木の家をデザインする「木材及びコスト管理」

 塾長の開始挨拶で、宮川村災害の件でみなさんにお願いしたボランティア・義援金の活動報告があった。 また今日、最終回を向かえるにあたり、今までの木造塾の成果報告感想や、来年の木造塾開校予定を連絡。 これからのみえ木造塾の方向性や、新たな活動提案を表明し、期待感がみなぎった所で、今回の講義の幕開けとなった三澤文子講師より、現在、自身の立場や活動体制、岐阜県立森林アカデミーの紹介、配布のパンフレット、資料の概略説明が行われた。 住宅のことや木材のことを正確に分析したスライドから、最近の住宅作品の紹介があり、氏のバイタリティーあふれる活動を写し出すとともに、会場全体が引き締まり、聴衆を一気に惹き寄せて行った。
講義概略
 前半は、岐阜県立森林アカデミーの沿革やその運営内容を紹介された。 アカデミーの活動はそのパンフレットP3.上3行の学長のことばがすべてで、これを軸にあらゆる事が行われていると説明された。 氏は木造建築スタジオが担当で、性能実験や地域への実践活動をおこなっているとのことである。 「木材及びコスト管理」の講義ではハウスメーカー住宅と M‘s作品を並べ、工事床面積プラン・坪単価・素材グレード・空間性などのデータ比較を行った。 氏の作品では[小さな木の家]のすすめと題し5つのコンセプトを提示された。
現在の建築主像から住宅のニーズまで私たちが最も身近に感じ、疑問に思っていることへの真髄にまで迫った。 また「ウッドマイルズ」と呼ばれる考え方を説明された。 これは木材の最も適した利用方法を、製造・輸送エネルギーやCO2固定値などを具体的な数値を元に検証された。 地産地消のすすめであるが、現在の日本ではこの感覚が麻痺しているようである。 氏はこの考え方から、日本の森林木材事情を見直そうと言っているのである。 休憩後[小さな木の家]についてのコストデータ分析である。 ここでは各項目の使用材料に対するコストバランスやその工夫を説明された。 またその中で、木材関係・ボルト・キッチン・カーテン・植木外構が設計事務所発注で行われていると説明。 それは納得の行く性能管理・デザインや仕上がりを期待するものである。 また木材関係についてはM‘s事務所の虎の巻を披露して[木材の発注について]と[木材検査]をリアルにまた厳しく熱弁された。 最後に近作の紹介で、木造2階建て1階は車庫と個室、2階リビングダイニング、水廻りのプラン。 敷地形状から南側デッキ縁側付、北側は高台から見える風景を取り入れた、片流れ屋根の建築である。 準防火地域の対応方法や特異なプランの提案などの苦労と、「住まいを大切に想う気持ちを誘発する」家づくり、と語られた。 そこには氏の独特な設計スタイルや、正確で綿密な現場監理に裏付けされた、丹精ですがすがしい内部空間があった。 質問コーナーでも話題に上ったが、氏の木材(木造)へのこだわりはどこからやってくるのでしょうか。 現在の氏の取り組みは誰にもたやすくまねができるものではなく、とても特殊性を帯びていると感じる。 しかし近い将来の木造住宅の進むべき一つの方向性を示唆しているに違いなく、この特殊性をわれわれ木造住宅に携わるものの努力で、普遍性のある活動へと変化させなければいけないのである。
 山下





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