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みえ木造塾2008 第1回講義記録
日時 平成20年6月14日(土)午後1時30分〜午後4時30分
場所 松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内)
講師 松留 慎一郎氏(職業能力開発総合大学校 教授)
テーマ 「よりよい伏図作成のための架構設計」

〜安全な架構設計の考え方、生産性の高い伏図作成法入門〜
講義概要
講義は、前半が住宅に関わる瑕疵問題の事例紹介、設計の考え方の基本などについての講義、後半は演習を中心に、グループ討議、結果発表をもとにチェック図および直下率の考え方、使い方について具体的な説明を受けた。
講義全般を通じて、架構設計の重要性を度々説かれ、意匠と架構との設計作業を同時並行して進めることが大切であると述べられた。その上で、架構設計のチェック方法として、松留氏が考案された「直下率」を紹介され、その効能などについて説明を受けた。講義の中で様々な点についてご教示いただいたが、主な点を列挙すると以下のとおりである。
・ 最近5年間の瑕疵問題の事例調査分析の結果、木造住宅で2階の床が傾くなどの不陸が増えており、その原因で最も多いのが「梁のたわみによる床の不陸」であった。
・ その事故原因を分析すると、低直下率、大スパン、バルコニー、吹き抜け等、大きく9種類に分類できた。また、8割が設計、2割が施工に原因があること、8割の設計の内訳は基本デザインが4割、伏図自体の問題が4割となった。
・ 「直下率」とは、柱あるいは壁の位置が1階と2階で平面的にどの程度一致しているかについて比率で表現した数値。事例分析結果によって、柱の直下率が50%以上、壁の直下率が60%以上が推奨できる。
・ 伏図は、これまで、設計者により作成されたものを現場の経験豊かな棟梁によってチェックがなされてきた。
・ しかし、プレカットが主流となった現在、プレカット工場で伏図作成する場合が増えたため、プレカット工場への負担が大きく、また、プレカット工場に伏図作成できる技術者の養成が急務となっている。
・ プレカット工場側でも伏図作成の負担軽減策として、CADセンターを設立して集中管理して作業効率化、ノウハウ蓄積による時間短縮を図っている。場合によっては、海外にCADセンターを設けてコスト縮減を図っている事例もある。
・ 参考図書「安全な構造の伏図の描き方」松留 慎一郎 監修、NPO法人 木の建築フォラム現代木創術研究所 著、建築知識 編集、潟Gスクナレッジ 発行
<特記>
松留氏の講義に先立って、「あかねブランド」について、サンプル手帳の配布とともに「あかねブランド利用促進戦略会議」メンバーの高田氏(都市環境研究所)から説明があった。従来「アリクイ材」と呼ばれている木材をあえて「あかねブランド」と命名して着目し、外観として欠点と評価されることもあるが、強度的にはなんら問題がないことをアピールして積極的に普及を図りましょうとの呼びかけがあった。

                             (文責:藤崎 昇)











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みえ木造塾2008 第2回講義記録
日時 平成20年7月5日(土)午後1時30分〜午後4時30分
場所 松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内)
講師 有馬 孝禮氏(宮崎県木材利用技術センター 所長)
テーマ 「木材とつきあう基礎知識」〜循環型社会をささえるのは木材資源〜


講義概略
・ 木材(森林)の位置付け 建築とのつながり 人と経済
・ 地球温暖化(地球環境)とのかかわり
・ 化石燃料の消費によるCO2の増加(地球温暖化)は事実、CO2の削減目標6%のうち3.8%を森林吸収に頼っているが、適切な森林整備・保全の確保が必要である。
・ 森林は自然林でなく人工林(スギ・ヒノキ)により、木材資源を使うことがCO2の削減のために必要であり山のお金を戻す事となる(地元の生物資源)
・ 森林・木材利用によるCO2放出削減の効果として、主に以下の項目があげられる
 1炭素貯蔵効果・森林成長、耐用年数、リサイクル→木造建築を増やすことは炭素をストックすることとなる。
2省エネルギー効果・他材料(鉄・化学製品)から木質材料へ→他材料を生産するのに炭素の放出量の差は、具体的にアルミと木質のもので100倍程の違いがある。
3代替エネルギー効果・バイオエネルギー、解体廃棄物燃料→しかし効率が化石燃料よりよくない。(効果の優先順位を考慮すること)
・ 資源循環型社会(持続可能な発展のために)
一般に循環型社会のキーワードは、抑制(Reduce)再利用(Reuse)再生利用(Recycle)
3Rに + 熱改修(Recover)すなわち4R → 「小さな資源循環」
さらに + 再生産(Renew)すなわち5R → 「大きな資源循環」
・ よって、「消費のための消費」から・化石資源や他資源の延命・生物(木材)資源の持続性により「生産を生む消費」をめざす。
・ 森林を取り巻く議論として、環境保護と資源生産の混同がある(ムードに流れやすく誤解がある。)森林荒廃の要因は、過伐採・未利用によって日本の森林が成長はしているが、管理が十分でないため資源の持続性に問題がある。(樹齢を考慮し財産を生かしながら法正林を増やす必要がある)
・ 具体的に、先生の地元(宮崎)を例に、いかに木材資源を利用してもらうか(徹底的に森林資源を分析し)、林業・製材・工務店・設計と連携して知恵を出し合い、経済を循環させ、地域産業を活性化させる必要がある。(Key Person は製材業?規模より工夫)
・ また、木材と付き合うための基礎知識として、トラブルを起こさないために、木の特質(樹種・節・年輪・密度・真比重・空隙・平衡含水率・繊維飽和点・異方性)を理解しなければいけない、また、JAS問題、四号特例問題、話したいことはいっぱいあるが今回時間がないので、またの機会になりました。
・ 時間が押し迫る中、先生の地元の風景のスライドショーを見ながら、今回の講義の復習で終了となりました。
・ 最後に言いたいことは、このようなことも平和が前提であること、地域(地元)の風景に合う建築物・町造りは何か、地元の生物資源・地元の国土をみると考えることや、実行することも多くあるにちがいないとのことでした。

                             (文責:落合 浩)














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みえ木造塾2008 第3回 講義記録
日時 平成20年8月2日(土)午後1時30分〜午後4時30分
場所 松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内)
講師 上野 英二氏(オークヴィレッジ木造建築研究所所長)
テーマ 「地産地生の家づくり」〜地域で取れる素材を、その地域に生かす家づくり〜


講義概略
・ はじめに
岐阜県生まれの上野氏が木造の世界に入るきっかけは、ある時突然「木造って美しい」と感じたから。
飛騨高山は、スギやヒノキといった針葉樹だけではなくブナやケヤキといった広葉樹も含め、古くから多くの木材が集まる場所で、家具製造は地域の基幹産業であった。そういう地域性もあり、木材市場に足を運ぶ内に木への関心が高まっていったという。 上野氏が大学で建築を学んだ25,6年前は木造専門の設計事務所は少ない時代。オークヴィレッジも当時は木工集団で、設計士はおらず大工さんが一人という状態だったが、現在ではクラフトから家具、建築までトータルで手がけ社員数は80名に及ぶ。理念の一つに「お椀から建物まで」。 100年保つ建物をつくりたくて伝統構法を続けてきたが、近年の法制度の下ではずいぶんと難しくなってきて今では「絶滅危惧種」になりつつある。「伝統=昔ながらの良いもの」と思われがちだが、良いものなら残ったはずで、絶滅に瀕しているということはどこかに問題があるからだと。 テーマの「地産地生の家づくり」は、通常「消」だが、地元に生かしこれからも生かすという意味を込めて「生」。

・ 影響を受けた建築物
スライドを使いながら上野氏が影響を受けた建物が紹介された。アメリカの著名な建築家チャールズ・ムーアが「地球を半周しても見に来る価値がある」といったという吉島家をはじめ、数百年前に建てられ重要文化財になっているような日本各地の民家から海外の教会やワイナリーまで、その範囲は幅広い。一見すると全く共通点がないようだが、庭屋一如といった考え方や、素材や景色、地形といったそこにあるモノをシンプルに生かしきる、といったところが共通点だろうか。

・ 自身の作品
続いて上野氏自身の作品が紹介された。ポイントは設計、施工、施主が一体となることで良い木造住宅が出来るということ。それと木をはじめとする土、石、紙などの素材を生かしきるということ。印象に残ったのは大谷石。栃木県周辺では古くから土蔵や外壁の石積みの材料として使われてきたが、それを建物の構造材、仕上げ材として多用している。 ほかにもカットサンプルを用いて適材適所の話や、木組みや木造の素晴らしさを日本が誇る文化として後世に伝えていくための「伝統木構造の会」の取り組みなど、盛りだくさんの内容だった。

・ まとめ
現在の日本の森林の成長量は年間7000万m3。日本人一人あたりの木材消費量は年間1m3程度といわれている。近い将来、輸入材に頼らなくても国産材でまかなえる時代が来るはず。また、木を伐ることは悪いことではなく、二酸化炭素の吸収源など森林の多様な機能を発揮させるためにも、木をどんどん使って健全な山を育てていく必要がある。木はやがて土に還り・・・といった循環が大切。つまり持続可能な建物。その為にも、地元の人が地元の素材で魅力的な建物を建てることが大切。最後は本日のテーマでもある「地産地生の家づくり」でしめくくられた。 氏が30年以上前に語った言葉でありオークヴィレッジのモットーでもある「100年かかって育った木は100年使えるモノに」。以前は当たり前のように実践されてきたが、戦後の経済成長とともに失われてしまったことのように思う。近年あらためて見直されてきてはいるが、言うは易く行うは難しで、果たして世の中で材としての寿命を全うしている木、住まいとしての寿命を全うしている家がどのくらいあるのだろう、と思いを巡らせてしまう。

・ みえ木造塾意見交換会
講義に先立ち、オプション企画として「みえ木造塾意見交換会」が開催された。会場は木の情報館二階の会議室。塾生と運営委員あわせて総勢17名が参加。自己紹介を兼ねた最近の取組みや関心事の報告に続いてフリートーク。木材の乾燥方法や梁桁用の乾燥材のストックなど現実に直面している課題から、最近話題の住宅瑕疵担保履行法まで、2時間では足りないほど活発な議論が交わされた。
                             (文責:川端 基洋)










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みえ木造塾2008 第4回 講義記録
日時  H20年9月6日(土) 午後1時30分〜午後4時30分
場所  松阪地区木材協同組合 木の情報館(ウッドピア松阪内)
講師  野水隆雄 氏 野水瓦産業梶@代表取締役
テーマ 「瓦のはなし」 〜野水瓦の仕事〜


講義概略
今回は、日本の瓦産地の代表とする淡路瓦と、淡路瓦に、人生をかけてこられている、野水氏の、貴重なお話をしていただきました。
およそ1400年もの昔、中国から日本に、瓦という建築材が伝来し、今現在にいたります。
その伝統を踏まえ、今現在の建築に対して、試行錯誤され今や日本を代表とする、建築家たちと共に日本だけでなく、世界をまたにかけて、瓦のすばらしさと、伝統と技術を発信しているのが、野水氏であります。
その瓦に対する思いと、野水氏の熱い思いが伝えられました。
その中でシンプルイズベストとなんどか言われていました。
なお阪神淡路大震災で、瓦に対するイメージが落ちてしまったにもかかわらず、絶え間ない努力と創意工夫が今現在の本葺瓦乾式SS工法が生み出されてきました。
なおさまざまな、瓦の世界で活躍されております。だれしもが瓦の魅力に引き込まれました。
                             (文責:山口 浩典)











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みえ木造塾2008 第5回 講義記録
日時  H20年10月11日(土) 午後1時30分〜午後4時30分
場所  三重県林業研究部
講師  山辺 豊彦氏 (構造家)
テーマ 「シリーズ・今日から使える木構造パート7」      〜実感できる、実際に役立つ実大実験〜

講義概略
‐実践概略‐
みえ木造塾は座学のみでなく、実践活動を通じて三重の木造技術を高めあってゆく事を目指している。
今年度は第5回がそれにあたっていて、山辺氏の解説付き木構造実大実験も今年で4年目を迎えた。
実大実験は耐力壁、梁、継手と一巡した感があったが、運営委員会で話し合った結果、もう一度基本的なスジカイ耐力壁と念願の土壁の耐力壁の破壊試験を行う事になった。
スジカイの壁を造る事は容易であったが、土壁の作成はコストや搬入の事を考え、運営委員にて小舞を掻き荒壁まで仕上げ、三重県林業研究所に搬入の後、左官職人によって中塗りを施した。

実験はスジカイ壁より始め、1/300、1/120、1/60、1/30、1/15ラジアンの引っ張り圧縮を加力し耐力壁の中地震時、大地震時にどのような変形や破壊が起こるかを参加者が自らの目で見て確認した。
30*90たすき掛けのスジカイは早くも1/300で目に見えるほどに面外にはらみ出し、中地震時1/120の段階で柱巾ほど、1/60では柱巾よりはみだすほどの面外のはらみが起こった。
そして大地震時1/30の三回目にて片方のスジカイ接合金具のビスがはずれてしまい、耐力は半分になった。
ここで一度計器をはずし、1/15まで再度加力。今回はスジカイ材が節のない非常に良いモノだったので座屈は見られず、実験は終了。
しかし、1/30からは見ていて恐ろしい程面外にはらみ出し、普通の一等材節ありの材ならそこから座屈する姿は容易に想像できる様子であった。

その後、試験体を交換する作業のあいだ、別室して山辺氏による壁倍率の算出方法の講議、運営委員の大森さんによるシロアリ実験の報告があった。

第2部は試験体を土壁に取り替え、もう一度スジカイと同じ実験を行った。
1/300ではほとんど変化は見られず、近寄るとわずかにチリが切れているのが確認出来た。
中地震時1/120では壁の四隅とチリが割れてチリ際にて土がぱらぱら落ちた程度であった。
1/60より壁の内部にクラック発生、四隅とチリはだいぶ割れ、貫のきしむ音が連続、大地震時1/30でクラックが5?10mmと大きくなり恐い感じ、きしみ音連続、しかしまだ行けそう、1/15で柱は大きく傾き、クラックは15mm以上、土台や梁と土壁の接点が大きくつぶれたり30mmくらいのすき間発生、中塗りが浮き、1/15以上でクラック30mmにて実験終了。観察すると面外に壁全体が10mmほどたわんでいるが柱からは出ていない様子。

すべての実験を終了後、参加者からは活発な質問が出て、山辺氏によって丁寧に答えていただいた。
自分の目で見る事は非常にインパクトもあり、大切な事である。今回の実験で得られた「経験」はリアル体験として今後仕事の上でも非常に役に立つ事だと思う。
施主への説得力にもなると思う。しかし、実験後に研究所の人から聞いたデータは「経験」で感じたほどの耐力は出てなかったそうだ。
正確な実験データは山辺氏の次回の講議に於いて解説してもらい、もう一度実験を客観的に見てみる事で「経験」に数字の裏付けをする事も大切である。
                             (文責:萩原 義雄)











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みえ木造塾2008   第6回 講義記録
日時  H20年11月8日(土) 午後1時30分~午後4時30分
場所  松阪地区木材協同 木の情報館 (ウッドピア松阪内)
講師  山辺 豊彦 氏(山辺構造設計事務所 所長)

テーマ:「連続シリーズ!今日から使える、やさしい木構造8」
     〜信頼にこたえる構造計画とは?〜
講義概略
講義は、前回の耐力壁破壊試験の実験結果の考察から始まった。耐力壁の試験方法は2000年度以降、以前の4種類の試験方法から、2種類の試験方法(柱脚固定式、タイロッド式)に変わっている。
また、壁倍率は4つの計測値(降伏耐力、終局耐力、最大荷重、特定変形時の耐力)を一定の計算処理をし、そのうちの一番数値の低い値が壁倍率算定用の数値として採用される。2体の実験については山辺氏が作成したそれぞれのデータシートに基づき説明があった。 まず、『筋かい30×90タスキ掛け(壁倍率3倍仕様)』であるが、剛性は中、靭性(ねばり)は小、壁倍率は1.54倍であった。既定の壁倍率を満たす耐力が出ていないがこれは、筋かいの面外への変形が影響している(資料1)
次に『土壁 三重中南勢地方仕様(壁倍率1.5倍仕様)』について。剛性は中、靭性(ねばり)は中、壁倍率は1.26倍であった(資料2)。それぞれの実験の壁倍率の算定については別表の通りとなった(資料3)。大工塾で数多くの実験を経験している山辺氏の解説は実践的で我々実務者にとてもわかりやすい。
今後の建築基準法改正の動向と構造設計との関連については、構造計算ルートを見る上での注意点や4号特例制度廃止に伴う確認申請時の変更点などの説明があった。木造住宅を設計していく上では避けて通れない大切な事項である。
後半の講義は、木構造を考える上でのポイントを項目ごとに解説。木構造は基本的に『軸組(柱・梁)』と『耐力壁』と『床組・小屋組』の3つの要素が接合部を介して力を伝達しあう。また、『基礎』は、常時荷重である水平荷重と地震・台風時に発生する水平荷重に耐える事が求められる。
架構の検討においては、鉛直荷重と水平荷重について検討する。鉛直荷重時は横架材を強度、変形(居住性)から考え、変形制限を変形増大係数を2として、スパンの1/250以下とする(但し、山辺氏の携わる大工塾においては1/450と考えている)。
他にもSS(スウェーデン式サウンディング)試験データの見方(特に自沈層の判断の仕方)、基礎配筋の考え方、含水率とクリープ(長期継続荷重による変形)との関係、などの解説が続いた。
今回もわかりやすく有益な講義となり、まさしく本講義のテーマ『今日から使える、やさしい木構造』そのものであった。

皆勤賞
 みえ木造塾では、毎年、全6回の講義すべてに出席した塾生に皆勤賞を出している。講義終了後、講師の山辺氏から皆勤賞を20人の塾生に手渡していただいた。毎回、尾鷲ひのきで作製していて、今回はオリジナルデザインのネームタグ。毎年、皆勤の塾生が多いことには驚かされる。運営に携わるものとしてはうれしい限りである。
                                     (文責:中西 修一)












資料1:筋向い30×90タスキ掛け
資料2:土壁 中南勢地方仕様
資料3:壁倍率の算定

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